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ABM(アカウントベースドマーケティング)とは|中小企業が重点顧客に絞り成果を出す手順

少数の重点顧客に光を当てるABMの概念イラスト 営業DX・組織

ABM(アカウントベースドマーケティング)は、見込み客を広く集める従来型とは逆に、「この会社から受注したい」と決めた少数の重点顧客へ資源を集中させるBtoBの手法である。中小企業にこそ向く。人も時間も限られるなら、数を追うより狙いを絞ったほうが受注に近い。

ABMを知っている企業の70.6%がすでに実践し、導入企業の76.4%が成果を実感している(IDEATECH、2025年)。本記事では、重点顧客を選んで攻略する手順を、公的・信頼できる調査の数値とともに整理する。

この記事の要点

  • ABMは「少数の重点顧客に絞り、全社で攻略する」手法。リード数ではなく受注の中身で成果を測る。
  • 導入企業の成果は、案件単価・受注金額の上昇51.5%、複数部署・関連会社の開拓51.5%(IDEATECH2025)。
  • 中小企業はリソース不足が最大の壁。だからこそ全方位ではなく、絞って深く攻める判断が効く。
  • 進め方は5ステップ。売上の顧客別分解→重点顧客の選定→攻略仮説→営業とマーケの役割分担→効果測定。

ABM(アカウントベースドマーケティング)とは

ABMは、特定の優良顧客(アカウント)を起点に営業とマーケティングを設計する考え方だ。「見込み客を広く集め、その中から有望な相手を探す」のが従来型なら、ABMは「先に狙う相手を決め、その相手に合わせて動く」。順番が逆になる。

背景には、BtoBの買い方の変化がある。ある調査では、BtoBサービスの導入で比較検討した候補は平均2.9社・中央値3社、意思決定は「3〜5人程度で検討」が23.9%を占めた(トゥモローマーケティング、2026年5月、n=180)。買い手は複数社を並べ、社内の複数人で決める。1人の担当者を口説くだけでは受注に届かない。会社という単位で、関わる人全員に働きかける発想が要る。

従来型のリード重視とABMの違い

両者は対立するものではなく、狙いと測り方が違う。

観点 従来型(リード重視) ABM(重点顧客重視)
起点 広く集めた見込み客 先に決めた重点顧客
対象の広さ 多数・不特定 少数・特定
測る指標 リード数・商談数 重点顧客の受注・単価・取引の広がり
向く場面 単価が低く数で稼ぐ商材 単価が高く検討が長い商材

中小企業の多くは、後者に近い。1件の受注が大きく、同じ顧客との取引を長く続けたい。ならば、狙いを絞るABMの考え方は実務に合う。

なぜ中小企業こそABMなのか

理由は、成果の出方にある。IDEATECHの調査では、ABMを知っている企業の70.6%が導入し(戦略の中心27.7%+組み込み済み42.9%、n=126)、導入企業の76.4%が成果を実感した(n=89)。実感した企業が挙げた具体的な成果は次のとおりだ。

ABMで実感した具体的な成果(成果実感企業 n=68) ブランド価値・信頼性 54.4% 案件単価・受注金額の上昇 51.5% 複数部署・関連会社の開拓 51.5%
出典:IDEATECH「BtoB企業のABM(アカウントベースドマーケティング)に関する実態調査」(2025年2月、成果を実感した企業 n=68)

注目したいのは「複数部署・関連会社の開拓51.5%」だ。1社に深く入ると、別の部署や子会社へ取引が広がる。新しい会社を1から探すより、すでに信頼のある1社の中で広げるほうが、少人数でも回る。案件単価の上昇51.5%も同じ構造で、浅く広くより、狭く深くのほうが1件あたりの金額が伸びる。

一方で、導入企業が挙げた課題の最多は「社内のリソース不足51.7%」、次いで「ノウハウ不足48.3%」だった(同調査、n=89)。これは中小企業にとって壁であると同時に、ABMを選ぶ根拠にもなる。リソースが足りないからこそ、全方位にばらまかず、勝てる相手に資源を寄せる。ABMは営業DX全体の中で機能する取り組みでもある。進め方の全体像は営業DXの進め方もあわせて参考にしてほしい。

重点顧客を攻略する5ステップ

いきなり専用ツールをそろえる必要はない。手元の売上データと紙1枚でも始められる。

1

売上を顧客別に分解する

直近1〜2年の売上を取引先ごとに並べる。上位数社で売上の大半を占める構図が、たいてい見えてくる。どこに利益の源があるかを先に数字で押さえる。

2

重点顧客を選ぶ

既存の優良顧客に似た新規、取引を広げられる既存先を重点顧客に据える。最初は5〜10社でよい。数を広げるより、1社ずつ丁寧に見るほうが続く。

3

会社ごとに攻略仮説を立てる

相手の課題、関わる部署、決める人を書き出す。買い手は平均3社前後を比べ複数人で決める。誰に何を届ければ前に進むかを、会社単位で描く。

4

営業とマーケで役割を分ける

ABM導入企業の40.4%が「営業とマーケの連携」に取り組む(IDEATECH2025)。相手に刺さる資料やセミナーはマーケ、個別の商談は営業。少人数でも役割を決めれば動ける。

5

効果を測り、見直す

リード数ではなく、重点顧客ごとの商談の進み・受注・単価・取引の広がりで測る。3カ月ごとに重点顧客の入れ替えを検討する。合わない相手は外してよい。

つまずきやすい注意点

ABMは万能ではない。次の3点を外すと、労力だけがかさむ。

  • 対象を広げすぎる。「重点」と言いながら20社も30社も並べると、1社あたりが薄くなり従来型に戻る。絞ることがABMの肝だ。
  • 単価の低い商材で使う。1件あたりが小さく数で稼ぐ商材なら、手間をかけるABMは割に合わない。検討が長く単価の高い商材で効く。
  • 短期で成果を求める。1社への深い入り込みは時間がかかる。半年〜1年の目線で、取引の広がりを追う。

リソース不足やノウハウ不足が壁になるなら、外部の支援を併用して小さく始める手もある。FORTIS JAPANの支援事例では、営業プロセスの標準化と重点顧客の深耕により、既存顧客のアップセルが2.1倍、少人数でも対応可能な案件数が1.8倍に伸びた例がある(FORTIS支援実績、企業により差あり)。まず自社の売上を顧客別に分解するところから始めたい。

まとめ

ABMは、少数の重点顧客に資源を集中し、会社という単位で攻略するBtoB手法だ。知っている企業の70.6%が実践し、76.4%が成果を実感している(IDEATECH2025)。案件単価の上昇や複数部署への取引の広がりは、人も時間も限られる中小企業と相性がよい。

全方位に追うのをやめ、勝てる相手に絞る。まずは売上を顧客別に並べ、重点顧客を5社選ぶところから始めれば、大きな投資も専門人材もいらない。

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