「自分の数字も追いながら、部下のマネジメントもする」――中小企業の営業マネージャーの多くがこの二足のわらじを履く。だが両方を気合で抱え込むと、プレイヤーとしてもマネージャーとしても中途半端になる。役割の線引きと時間の使い方を設計すれば、少人数でもチームの成果は伸ばせる。
この記事の要点
- 課長の99.5%がプレイヤー業務を兼ねる(産業能率大学調査)。営業マネージャーの「兼務」は例外ではなく前提。
- 役割がぶれると、数字の未達・育成の停滞・属人化の3つが同時に起きる。
- 両立のカギは「何を自分でやり、何を手放すか」を先に決めること。根性でなく設計で回す。
- 仕組み化でプレイヤー業務の比重を下げれば、マネージャーは育成とパイプライン管理に時間を回せる。
営業マネージャーの役割は「兼務」が前提になっている
営業マネージャーの仕事は、本来はチームの成果を最大化することだ。目標配分、案件の進捗管理、メンバー育成、他部署との調整――いずれもプレイヤーとは別の仕事である。ところが現実には、自分の担当顧客や数字を持ったまま管理も担う「プレイングマネージャー」がほとんどだ。
産業能率大学総合研究所の調査では、課長の99.5%がプレイヤーとマネジャーを兼務し、仕事に占めるプレイヤー業務の割合は加重平均で50.1%にのぼった。業務のほぼ半分が自分の実務で埋まっている計算になる。日本経営協会の調査でも、管理職の86.8%がプレイングマネージャーで、マネジメントに専念できている人は13.2%にとどまる。
人材の採用が難しい中小企業では、この傾向はさらに強い。プレイヤーを1人減らしてマネージャーに専念させる、という余裕がないからだ。つまり「兼務をやめる」ことは選択肢にならない。現実的な問いは、兼務したまま成果を出すために役割をどう設計するか、である。
役割がぶれると起きる3つの問題
プレイヤーとマネージャーの線引きが曖昧なまま走ると、次の3つが連鎖して起きる。自分の数字に追われるほど、マネジメントは後回しになる。
| 起きる問題 | 何が原因か | 放置した先 |
|---|---|---|
| 数字の未達 | マネージャー自身の案件が最優先になり、チーム全体の進捗が見えない | 個人成績は出てもチーム目標は未達が続く |
| 育成の停滞 | 同行やフィードバックの時間が取れず「見て覚えろ」になる | 若手が伸びず、マネージャーの負担がさらに増える |
| 属人化 | 優良顧客や勝ちパターンがマネージャー個人に集中する | その人が動けない月は売上が落ちる |
日本経営協会の調査では、管理職の悩みの1位は「部署の人材不足」で50.3%、2位に「プレイヤー業務の過大」が23.9%で続いた。3年前と比べて業務負担が増えたと答えた人も51.0%いる。負担を根性で吸収しようとするほど、上の3つは深くなる。
兼務したまま両立する5ステップ
役割を両立させるのは、時間を増やすことではない。「何を自分でやり、何を手放すか」を先に決める設計の問題だ。次の順で進めたい。
自分の時間の中身を1週間記録する
プレイヤー業務・マネジメント・社内調整・事務に何時間使ったかを書き出す。感覚ではなく実データで、何に偏っているかを可視化する。
マネージャーにしかできない仕事を3つに絞る
案件の進捗レビュー、メンバーの育成、重要顧客の意思決定同席。この3つは手放さない。逆に、ここ以外は任せるか仕組みに置き換える対象とする。
自分の担当件数に上限を決める
プレイヤーとして持つ案件を無制限にしない。上限を超えた分はメンバーに渡す前提で設計する。ここが曖昧だと、自分の数字がマネジメント時間を侵食し続ける。
週次レビューを固定枠にする
メンバーの案件を見る時間を毎週同じ曜日・時間に固定する。空いたらやる、では永遠に取れない。30分でもよいので先に予定を押さえ、動かさない。
勝ちパターンを言葉にして渡す
自分が受注できる理由をトークや手順に落とし、メンバーが再現できる形にする。個人のカンを組織の型に変えれば、マネージャーが動かない月も数字が落ちにくい。
仕組みでマネージャーの時間を守る3つの打ち手
役割を絞っても、業務量そのものが減らなければ時間は空かない。プレイヤー業務の比重を下げるには、個人の努力ではなく仕組みで巻き取るのが近道だ。
| 打ち手 | 何が変わるか | マネージャーが取り戻す時間 |
|---|---|---|
| 案件情報の一元管理 | 進捗を口頭確認でなく画面で把握。報告待ちが消える | 進捗ヒアリングの時間 |
| 初動業務の外部化・自動化 | リスト作成や初回接点をマネージャーが抱えずに済む | 新規接点づくりの時間 |
| 提案・事務のテンプレ化 | ゼロから作らず、型を直して使う。品質も揃う | 資料・事務の作業時間 |
FORTIS JAPANの支援では、営業プロセスの標準化とツール定着によって商談数が2.4倍、外部化で対応可能な案件数が1.8倍に伸びた例がある(いずれもFORTIS支援実績、企業により差あり)。接点づくりや初動を仕組みに寄せるほど、マネージャーは自分のプレイヤー業務を減らし、育成と案件レビューに時間を回せる。
こうした標準化や仕組み化の全体像は、営業DXとは|中小企業が失敗しない進め方と始め方ガイドで体系的に整理している。あわせて読むと、どこから着手するかの判断がつけやすい。
中小企業がつまずきやすい点と回避策
最後に、プレイングマネージャーが陥りやすい落とし穴を3つ挙げる。
- 「自分がやった方が早い」で抱え込む:短期では正しいが、育成が進まず負担は増え続ける。最初は非効率でも任せて直す方が、半年後の自分を楽にする。
- マネジメントを「余った時間」でやろうとする:余りは出ない。レビューや1on1は先に枠を確保し、プレイヤー業務をその周りに置く。
- 役割を自分の中だけで決める:何を任せ何を残すかを上司・メンバーと共有しないと、期待値がずれて不満の種になる。線引きは言葉にして合意する。
まとめ
営業マネージャーの兼務は、中小企業ではなくせない前提だ。だからこそ、根性で両立するのではなく、役割を絞り・時間を固定し・仕組みで巻き取る設計が要る。自分にしかできない3つ(案件レビュー・育成・重要顧客の意思決定同席)を守り、それ以外は任せるか仕組みに置き換える。まずは1週間、自分の時間の使い方を記録するところから始めたい。どこに時間が偏っているかが見えれば、最初に手放すべき業務が決まる。
プレイヤー業務を仕組みに任せ、マネジメントに時間を
FORTIS JAPANは、営業の標準化・仕組み化とAI活用で、少人数の営業組織の成果づくりを伴走支援しています。自社の役割分担や時間配分を整理したい方は、お気軽にどうぞ。

