生成AIを営業やバックオフィスで使う企業は増えた。だが「誰が・何を・どこまで入れてよいか」を決めた企業は、まだ少ない。2026年9月15日に公表された調査は、その落差を数字で示した。営業現場で顧客情報や商談内容をAIに入力する場面が日常になった今、中小企業こそ先に手当てしておきたいテーマだ。
この記事の要点
- 会社管理AIを業務利用する企業は54.6%。一方でルールが十分に浸透した企業は15.1%、その差は39.5ポイント(アビタス教育総合研究所, 2026年9月)。
- 管理外のAI利用(いわゆる”管理外AI”)の実態を44.6%が把握できていない。営業現場での情報入力が最大の盲点になりやすい。
- 中小企業の備えは3点。入力ルールを先に決める/管理外AIを共通ツールに集約する/配って終わりにせず教育で浸透させる。
何が起きたか:活用は5割超、ルール浸透は1.5割
アビタス教育総合研究所(パスメイクホールディングス傘下)は2026年9月15日、企業のAIガバナンスに関する調査結果を公表した。対象は全国の課長職以上の管理職350名(IT・情報サービス業を除く、2026年8月・インターネット調査)。
調査によると、会社が管理するAIを業務で使う企業は54.6%(全社的26.0%、一部部署19.7%、試験的8.9%)。半数を超える企業が、すでにAIを日常業務に組み込んでいる。
ところが、利用ルールを整備し社内に十分浸透させた企業は15.1%にとどまった。活用と統制の差は39.5ポイント。ルールが「整備されているが浸透していない」は19.7%、「現在整備中」は14.6%、「未整備」は34.9%だった。ルールを作ることと、現場に根づかせることは別の課題だと分かる。
| 調査項目 | 結果 |
|---|---|
| 会社管理AIを業務利用 | 54.6% |
| ルールを整備し十分に浸透 | 15.1% |
| 管理外AIの実態を把握できず | 44.6% |
| リスク評価プロセスが不十分 | 51.1% |
| AI専門人材が不足 | 48.2% |
出典:アビタス教育総合研究所「企業のAIガバナンスに関する調査」(2026年9月15日公表、管理職350名)
なぜ重要か:営業現場が”管理外AI”の温床になりやすい
この39.5ポイントの差は、規模の大きい企業ほど目立つ話に見える。だが実際に危ういのは、専任のIT担当やルール整備の余力が乏しい中小企業だ。
営業は、AIと最も相性がよく、同時に最も情報が漏れやすい部門だ。提案書のたたき台づくり、メール文面の生成、議事録の要約——どれも顧客名・案件金額・商談メモを入力しがちだ。会社が用意したツールがなければ、担当者は個人のアカウントで手近な生成AIを使う。これが管理外AI(シャドーAI)であり、44.6%の企業が実態を把握できていない領域そのものだ。
入力した情報がどこに残るか分からないまま商談が進めば、顧客の信頼を損なうリスクがある。逆に、ルールを整えて安全に使えば、AIは営業の生産性を大きく押し上げる。当社が支援した中小企業では、AIを組み込んだ営業プロセスの見直しにより商談数2.4倍という成果も出ている。使うか使わないかではなく、どう安全に使うかが分かれ目になる。
中小企業の営業現場が備える3点
入力してよい情報を先に決める
ツール選定より前に「顧客の実名・金額・個人情報は入れない」「業界や課題など一般化した情報はOK」といった線引きを一枚にまとめる。判断を現場任せにしないことが第一歩だ。
管理外AIを可視化し、共通ツールに集約する
誰がどのAIを使っているかを一度棚卸しする。個人利用を禁じるだけでは地下に潜るだけだ。会社が承認した共通ツールを用意し、そこに寄せることで実態を把握できる状態に変える。
配って終わりにせず、教育で浸透させる
同調査でも、企業が最優先に挙げた対策は「従業員教育」(36.6%)だった。ルールは配布した瞬間から形骸化する。短い勉強会と、そのまま使える入力テンプレをセットで渡すと、現場に根づきやすい。
AIを営業でどう位置づけるかは、個々のツール選びより上流の話だ。全体像はAI営業の総合ガイドで整理しているので、あわせて確認してほしい。
まとめ
活用は5割を超え、ルール浸透は1.5割。この差は、AIを止める理由ではなく、使い方を整える合図だ。営業は入力する情報が濃い部門だからこそ、線引き・集約・教育の順で手を打てば、リスクを抑えながら成果につなげられる。まず「入れてよい情報」を一枚決めるところから始めたい。

