ChatGPTを営業で使ってみたが、当たり障りのない文章しか返ってこない——。原因の多くは、ツールではなく「指示文(プロンプト)の書き方」にある。同じChatGPTでも、渡す前提と条件しだいで出力の質は大きく変わる。この記事では、営業メール・提案骨子・議事録要約・リサーチ・ロールプレイの5シーンで、そのままコピーして使えるプロンプト文例と、自社向けに直すコツをまとめる。
この記事の要点
- 良いプロンプトは「役割・前提・制約・出力形式」の4点で決まる
- 営業メール/提案骨子/議事録要約/リサーチ/ロープレの5シーンにそのまま使える文例を掲載
- 顧客の機密情報や個人情報は入力しない運用が前提。出力は必ず人が確認する
ChatGPTの営業活用は「プロンプトの型」で差がつく
総務省「令和7年版情報通信白書」によると、日本企業で何らかの業務に生成AIを利用している割合は55.2%。うち「メールや議事録、資料作成等の補助」に使う企業は47.3%にのぼる。営業の日常業務は、まさに生成AIが得意とする領域と重なる。
一方、個人の生成AI利用経験率は日本26.7%と、米国68.8%や中国81.2%に大きく遅れる。裏を返せば、営業現場で「使える型」を先に身につけた中小企業には差別化の余地が残っている。カギは、思いつきで質問するのではなく、狙った成果物が出る指示文をテンプレートとして持つことだ。
良いプロンプトの4要素
成果が安定するプロンプトには共通の骨格がある。次の4点を意識するだけで、返ってくる文章の精度は変わる。
役割を与える
「あなたはBtoB向けの営業担当です」のように立場を指定する。視点が定まり、語り口が営業向けになる。
前提・背景を渡す
商材、相手の業種や役職、想定課題を書く。情報が具体的なほど、出力も具体的になる。
制約を指定する
文字数、トーン、禁止事項を決める。「250字以内」「売り込み色を抑える」などの条件が精度を上げる。
出力形式を決める
「件名を3案」「表で」「箇条書き3点」など、欲しい形を先に伝える。手直しの手間が減る。
シーン別・そのまま使えるプロンプト例
以下は[ ]の部分を自社の情報に差し替えればすぐ使える文例。まずはそのまま試し、返ってきた文章を見ながら条件を足していくとよい。
①初回の営業メールを作る
あなたはBtoB向けの営業担当です。次の前提で初回アプローチのメールを作成してください。
・商材:[中小企業向けの営業支援ツール]
・送り先:[製造業の営業部長]
・相手の想定課題:[新規開拓が属人化し、案件数が読めない]
・条件:件名は3案、本文は250字以内、売り込み色を抑え、相手の課題への言及から書き始める
・出力形式:件名3案+本文(1案)
返信率が気になるなら「一文を短く」「専門用語を避ける」を条件に足す。開封率の観点はAI営業の総合ガイドもあわせて確認したい。
②提案書の骨子を作る
あなたは提案書を作るコンサルタントです。次の商談メモから提案書の骨子を作ってください。
・顧客の課題:[新規開拓が個人任せで、数が読めない]
・当社の解決策:[リスト作成からアプローチまでの標準化支援]
・制約:スライド6枚構成、各ページは見出しと要点の箇条書き、専門用語は避ける
・出力形式:ページ番号・見出し・要点(各3点まで)を表にする
骨子が出たら、自社の強みや実績は自分で加筆する。ここはAIに任せきらず、人が差をつける部分だ。
③商談の議事録を要約する
次の商談メモを3つに分けて要約してください。①決まったこと ②相手の懸念 ③次回までの宿題(担当と期限つき)。冗長な表現は省き、各項目3行以内。
商談メモ:[ここに貼り付け]
3分類を指定するだけで、そのまま社内共有できる形にまとまる。手元のメモが箇条書きでも十分に機能する。
④商談前のリサーチと仮説出し
あなたは営業リサーチの担当です。次の企業について、商談前に押さえるべき点を整理してください。
・企業:[企業名・業種・規模]
・観点:最近の動き/想定される課題/当社が刺さりそうな切り口
・制約:推測は「推測」と明記し、確認が必要な点は質問形式で示す
・出力形式:3観点それぞれ箇条書き3点
「推測は明記」と条件に入れるのが要点。AIは事実と推測を混ぜて答えがちなので、線引きを先に指示しておく。
⑤反論対応のロールプレイ
あなたは購買担当役です。私の提案に対し、価格の高さを理由に断るスタンスで反論してください。私が返答したら、その返答の弱い点を1つ指摘し、次の反論を続けてください。5往復で終了し、最後に改善アドバイスを3点ください。
相手役をAIに任せれば、一人でも切り返しの練習ができる。新人の立ち上げや、苦手な場面の反復に向く。
シーン別の使いどころ早見表
| シーン | 効くプロンプト要素 | 得意なこと | 注意点 |
|---|---|---|---|
| ①メール作成 | 制約(字数・トーン)+出力形式 | たたき台の量産 | 固有名詞・事実は自分で確認 |
| ②提案骨子 | 役割+前提+表形式 | 構成の抜け漏れ防止 | 自社の強みは加筆が必要 |
| ③議事録要約 | 出力形式(3分類) | 抽出と整理 | 元メモの精度に依存 |
| ④リサーチ | 前提+「推測は明記」 | 観点出し | 誤情報(ハルシネーション) |
| ⑤ロープレ | 役割(相手役)+進め方 | 一人で練習 | 実際の相手とは異なる |
生成AI利用の現在地
日本の個人利用は世界と比べて遅れている。だからこそ、今から営業の定型業務にプロンプトの型を持ち込む中小企業は、先行して生産性を上げられる。
使うときの3つの注意点
便利さの裏で、営業が押さえておくべき前提がある。
- 機密・個人情報を入力しない:顧客名や見積など、社外に出せない情報はそのまま貼らない。無料版・有料版それぞれの学習利用やデータの扱いの設定を確認し、社内ルールを決めておく。
- 出力は必ず人が確認する:AIは事実と異なる内容をもっともらしく返すことがある。数値・固有名詞・法的な記述は自分で裏取りする。
- 自社の言葉に直す:出力はあくまでたたき台。自社の強みや相手との関係性を踏まえ、最後は人が仕上げる。
この型を営業チームで共有できれば、メール作成や議事録づくりにかけていた時間を商談準備に回せる。標準化と組み合わせて運用した企業では、商談数が2.4倍に伸びた例もある。
まとめ
ChatGPTの成果は、ツールの性能より「指示文の型」で決まる。役割・前提・制約・出力形式の4点を押さえ、シーン別のプロンプトをテンプレート化しておけば、少人数の営業でも安定して質の高いたたき台を得られる。まずは今日の業務で1つ、メールか議事録から試してみてほしい。生成AIを含む営業効率化の全体像はAI営業の総合ガイドで整理している。

