「新規開拓をやらなければ」と分かっていても、何から手をつけるか決めきれない中小企業は多い。方法は数多くあり、それぞれ立ち上げの速さもコストも向き不向きも違う。手当たり次第に試すと、人手と時間だけが消える。
この記事では、新規開拓の代表的な方法を「プッシュ型」「プル型」に整理し、自社に合うやり方を選ぶ判断軸をまとめた。少人数でも成果につなげる組み合わせ方まで示す。
この記事の要点
- 新規開拓の課題を感じる営業担当は87.2%。多くが「方法選び」でつまずく(ラクス調査)。
- 方法は大きくプッシュ型とプル型の2系統。速効性か資産性かで性格が分かれる。
- 選ぶ軸は「商材の購買行動」「立ち上げ速度」「自社の人員」の3つ。
- 1手法に絞って検証し、成果が出たものへ集中投下するのが定石。
新規開拓が「難しい」と言われる理由
BtoB企業の営業担当1,013人を対象にしたラクスの調査(「新規開拓の現状や課題点」に関する調査、2024年6月)では、新規顧客開拓に課題を感じている人が87.2%にのぼった。中小企業経営者に聞いた大同生命サーベイ(2023年4月度)でも、開拓の課題は「人材不足」が41%で最多だった。
難しさの正体は、能力ではなく構造にある。新規開拓を行えていない理由を見ると、上位は時間と人員、そして「方法がわからない」だ。つまり方法を正しく選び、少ない工数で回せる形にできれば、多くの壁は下がる。
新規開拓の方法一覧
方法は、自社から相手に働きかけるプッシュ型と、見込み客に見つけてもらうプル型に分けると整理しやすい。
プッシュ型(アウトバウンド)
こちらから接点を作る。立ち上げが速く、ターゲットを狙い撃ちできる。反面、担当者の工数に成果が比例しやすい。代表的な手法は次の通り。
- テレアポ:電話で直接アポを取る。地域や業種を絞れば即日で商談化することもある。トークと架電数の管理が成果を左右する。
- 飛び込み訪問:近隣エリアや同一ビル内など、移動効率が高い商圏で機能する。決裁者に会える確率は低いが、対面の情報量は大きい。
- フォーム営業:問い合わせフォーム経由で提案文を送る。担当者が少なくても数を出せる。送り先の選定と文面の質で反応率が変わる。
- 手紙・DM:役職者宛ての手紙は開封されやすい。数は絞られるが、狙った企業に確実に届けたい時に向く。
- 展示会・セミナー:検討層とまとめて接点を持てる。ただし名刺を集めただけで終わらせず、会期後48時間の初動が商談化を分ける。
プル型(インバウンド)
見込み客が動いた時に自社が見つかる状態を作る。立ち上がりは遅いが、蓄積すると問い合わせが自動的に増える資産になる。
- SEO・オウンドメディア:検索する見込み客に記事で見つけてもらう。成果まで数か月かかるが、一度上位化すれば継続的に流入する。
- Web広告:リスティングやSNS広告で即座に露出できる。予算を止めると流入も止まるため、プル型の中では速効・変動費型。
- SNS発信:経営者や担当者個人の発信で信頼と想起を積む。BtoBではとくに実名の情報発信が効きやすい。
- 紹介・リファラル:既存顧客からの紹介は受注率が高い。満足度の高い顧客に、紹介を依頼する仕組みを持てるかが鍵。
- インテントセールス:自社サイトの閲覧履歴や検索行動から「今検討している企業」を特定し、動きのある相手に絞ってアプローチする。
| 手法 | 系統 | 立ち上げ速度 | 向く場面 |
|---|---|---|---|
| テレアポ・飛び込み | プッシュ | 速い | 地域密着・即アポが欲しい |
| フォーム営業・DM | プッシュ | 速い | 担当者が少なく数を打ちたい |
| 展示会・セミナー | プッシュ | 中 | 検討層とまとめて会いたい |
| SEO・オウンドメディア | プル | 遅い | 問い合わせを資産化したい |
| 紹介・リファラル | プル | 中 | 既存顧客の満足度が高い |
自社に合う方法の選び方
商材と顧客の購買行動を整理する
単価が高く検討が長い商材はプル型で信頼を積む。単価が低く即決に近いならプッシュ型が向く。
立ち上げ速度・コスト・人員で絞る
今すぐ商談が必要ならプッシュ型を先行。人員が限られるなら、工数を増やさず数を出せる手法から始める。
1手法を検証し、勝ち筋に集中投下する
同時に手を広げない。1つを数値で検証し、反応が出たものへ人と予算を寄せる。
少人数でも成果を出す組み合わせ方
プッシュ型で今月の商談を作りながら、プル型で翌期以降の流入を仕込む。この二段構えが、少人数の現場では最も崩れにくい。加えて、リスト作成や初回メール文の作成といった定型作業をAIやツールに寄せると、担当者は商談そのものに時間を使える。
FORTIS JAPANの支援実績では、こうした分業と型化を進めた結果、商談数2.4倍、アップセル2.1倍、対応可能案件1.8倍という変化が出ている。手法の数を増やすより、選んだ手法を回し切る仕組みが成果を分ける。
新規開拓でよくある失敗と回避策
方法選び以前に、進め方でつまずく例も多い。中小企業の現場で繰り返し起きるのは次の3つだ。
- 手を広げすぎる:テレアポもSEOもSNSも同時に始め、どれも中途半端で終わる。まず1手法に絞り、数値で良否を判断する。
- 成果を測っていない:架電数や送信数だけを見て、商談化率やアポ率を追えていない。工程ごとの数値を置き、どこで落ちるかを可視化する。
- 属人化させる:できる担当者に依存し、退職や異動で成果が途切れる。トークや文面、リストの基準を型化し、誰でも一定水準で回せる状態にする。
いずれも「選ぶ」より「回し切る」段階の問題だ。手法の巧拙より、検証と型化の有無が成果を分ける。
まとめ
新規開拓に王道の1手法はない。あるのは、自社の商材・リソースに合う方法を選び、検証しながら勝ち筋へ寄せていく進め方だ。まず1つ、今月試せる手法を決めるところから始めたい。

