「提案書づくりに毎回半日とられる」。中小企業の営業で、よく聞く悩みだ。顧客ごとに構成を考え、過去資料を探し、体裁を整える。この時間が受注の数を押し下げている。
生成AIはこの作業をかなり肩代わりできる。実際、営業の資料作成で生成AIを使う人は53.9%、そのうち58.9%が作成時間を3割以上減らしたと答えている(株式会社スライドチーム調査、2026年5月)。一方で「丸投げすると使えない提案書が出てくる」という失敗も多い。
この記事では、中小企業が受注につながる提案書を、生成AIで短時間に仕上げる手順と、つまずきやすい点の回避策を整理する。
この記事の要点
- 営業の65.2%が資料作成を負担と感じ、生成AI利用者の58.9%が作成時間を3割以上削減している(スライドチーム調査)。
- 提案書は「型を先に決めて素材を渡す」ことが成否を分ける。白紙から丸投げすると定型的な提案書になる。
- 数字・事実の検証と自社テンプレートへの整形は人が担う。ここを省くと信頼を落とす。
- 生成AIが得意なのは構成・文章化・要約。顧客固有の判断や価格の根拠づけは人が握る。
なぜ今、提案書作成に生成AIなのか
企業の生成AI利用はもう特別ではない。総務省「令和8年版 情報通信白書」(2026年)によると、国内企業で何らかの業務に生成AIを使う割合は86.4%。業務類型別では「議事録・メール作成補助」が約7割で最も高く、「営業・販売」でも約6割が活用していた。
提案書はこの流れの中心にある。前述のスライドチーム調査では、生成AIで作成している資料のトップが「営業提案書(顧客向け)」だった。資料作成を負担に感じる営業は65.2%にのぼり、週6時間以上を資料作成に費やす人が約4割を占める。提案書づくりは、時間を食う割に差がつきにくい作業の代表格だ。
ここを削れば、商談そのものに時間を回せる。古い調査だが、HubSpot Japanの営業実態調査(2019年)でも、営業担当者は働く時間の25.5%をムダと感じ、社内報告業務(32.4%)などの非販売業務が槍玉に挙がっていた。提案書作成の時短は、営業の実働時間を取り戻す打ち手になる。
生成AIで受注につながる提案書を作る5ステップ
成否は、生成AIに何を渡すかで決まる。白紙から「提案書を作って」と頼むと、どこかで見たような一般論が返ってくる。次の順番で進めると、精度が安定する。
提案書の「型」を先に決める
現状→課題→打ち手→効果→費用→次の一歩、といった構成を自社で固定する。生成AIに構成から考えさせると毎回ぶれる。勝ちパターンの型をプロンプトに先に渡すのがコツだ。
顧客情報・課題・自社の強みを素材で渡す
商談メモ、ヒアリング内容、想定課題、過去の受注事例を箇条書きで添える。素材が具体的なほど、提案書は顧客の言葉に寄っていく。ここで手を抜くと一般論しか出てこない。
構成とドラフトを生成させる
型と素材を渡し、まず見出し構成を出させる。構成に合意してから各節の本文を書かせると、後戻りが減る。1回で完成を狙わず、節ごとに直す前提で進める。
数字と事実を人が検証する
生成AIは、もっともらしい数字や事例を作ることがある。価格、納期、実績、他社名などは必ず一次情報で裏取りする。顧客に出す前の事実確認は、担当者の責任として外せない。
自社テンプレートに整えて仕上げる
文章を自社の提案書フォーマットに流し込み、表現のトーンをそろえる。生成AI特有の硬い言い回しは、顧客に合わせて書き直す。この最終整形が、提案書の説得力を決める。
作業別・生成AIの向き不向き
提案書づくりを作業に分けると、任せてよい部分と人が握るべき部分が見えてくる。生成AIを使う作業として多いのは「文章作成・要約・整理」「アイデア出し」「情報収集」の順だった(スライドチーム調査)。この傾向を目安に切り分けるとよい。
| 作業 | 生成AIの適性 | 担い手 |
|---|---|---|
| 構成案・見出し作り | ◎ 型を渡せば速い | AI主体+人が選択 |
| 本文の文章化・要約 | ◎ 最も時短が効く | AI主体 |
| 数字・実績・事例の記載 | △ 検証が必須 | 人が裏取り |
| 価格の根拠づけ・交渉設計 | × 顧客固有の判断 | 人 |
| 顧客の意思決定者への刺さり方 | × 現場の肌感が要る | 人 |
任せる範囲を「文章化と構成」に絞り、判断と検証を人が握る。この線引きが、速さと信頼の両立につながる。AIを営業プロセス全体でどう位置づけるかは、AI営業の総合ガイドでも整理している。
つまずきやすい点と回避策
生成AIで提案書を作る人が感じる不満の上位は、「プロンプト作成が難しい」「生成情報の正確性に不安」「生成AIっぽいデザインになる」「自社テンプレートに合わせられない」だった(スライドチーム調査)。それぞれに打ち手がある。
| つまずき | 回避策 |
|---|---|
| プロンプトが難しい | 自社の型を貼り付ける定型プロンプトを1つ作り、素材だけ差し替える運用にする。 |
| 内容の正確性に不安 | 数字・固有名詞は人が一次情報で確認する工程を手順に組み込む。 |
| AIっぽい文章・デザイン | 最終整形を人が担い、顧客の言葉と自社トーンに書き直す。 |
| 自社テンプレに合わない | デザインはテンプレートで固定し、生成AIには中身の文章だけを任せる。 |
| 顧客情報の入力 | 学習に使わない設定を選び、固有名詞は仮名化するなど社内ルールを決める。 |
時短効果はどれくらい見込めるか
生成AIを使う営業の削減幅は、1〜2割が最多だが、3割以上削減した人も6割近い。提案書を量産するほど、この差は積み上がる。
時短そのものが目的ではない。空いた時間を商談や追客に振り向けて、はじめて成果に変わる。提案書作成の効率化は、営業プロセス全体を立て直す入口にすぎない。
FORTIS JAPANは、リスト作成から商談獲得、提案フェーズまでを含めて営業活動を支援し、商談数2.4倍・アップセル2.1倍・対応可能案件1.8倍の実績がある。「提案書は速くなったが受注が伸びない」という段階で、プロセス全体の設計から相談したい場合は、下記から問い合わせてほしい。

